「著作権判例百選」の出版差止について

本年11月初旬に出版が予定されていた『著作権判例百選(第5版)』(有斐閣)が、10月26日、東京地方裁判所(嶋末和秀裁判長)によって、著作者人格権の侵害を理由として、出版を差し止める仮処分決定が下されたと報道されている。

出版差止を請求していたのは、同書第4版(2009.12刊)の編集に加わっていた東京大学の大渕哲也教授だ。その主張は、「改訂にあたって『編者』から自分の名前が外された」ことが、著作者人格権(氏名表示権)の侵害にあたるということのようだ。第4版を原著書として第5版が出来上がっているので、原著書の編者であった大渕教授の名前が削られるのはおかしいということのようだ。
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「サムの息子」法について

 神戸市での連続児童殺傷事件の加害者が、本年6月11日、太田出版から出版した手記『絶歌』(元少年A)については、当初から、被害者の感情への配慮を欠くとして批判されてきた。これに対して、太田出版は、遺族の感情を乱したことを重く受け止めるとしつつ、犯罪から社会復帰へいたる過程を明らかにすることは、少年法を考え直す機会ともなるとして出版することとしたとする声明を発表した。

 遺族からは、出版社に対して抗議文が送付され、出版による重篤な二次被害を被っているとして、速やかに手記を回収するように要求されている。そこでは、元少年Aの犯行は、極めて特異で残虐性の高いものであるから、少年事件一般を考察するうえで、益するところはないとも述べられていた。

 遺族の抗議文では、この手記の出版につき、元少年Aが「自己を正当化しようとしているように思われます」という指摘があるが、出版への反発が広がったのは、一つには手記の内容の自己肯定的な表現のためであるようだ。
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安保関連法案成立で失ったもの

安保関連法案の成立によって失ったもの;

第一に、憲法9条2項(戦力不保持、交戦権の否認)の規定。

政府は、「自衛のための最低限度の武力のみをもつことができる」という解釈には変更ないというのだろうが、その「自衛」の意味は、他国の艦船を公海上で守ることを可能とするように拡大された。なにしろ想定されるのは、予防的先制攻撃(ブッシュ・ドクトリン)を自衛のために可能だとしていた国を守ることだから、その国の要請にこたえるならば、「自衛」の意味はほとんど無制約なまでに拡大されることにもなろう。

政府が想定する集団的自衛権行使の条件は抽象的だが、想定されるのは、南シナ海で進行しつつある事態を牽制することだ。直近の課題やニーズに対応するためであれば、他に方法はいくらでもあっただろうに、解釈によって憲法の根幹を歪めたことにより、もっと大きな問題を生むことになった。
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最高裁、非嫡出子の相続分合憲判断の見直しか?

2013年7月10日、最高裁は、非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする民法900条4号但書の規定が、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反するかが争われた訴訟において、大法廷で弁論を開いた。最高裁は、18年前の平成7年7月5日の決定以降、民法900条4号但書を合憲と判断してきたが、ようやく違憲判決が出る機運になりつつあるようだ。(2013年9月4日、違憲判決が出た。→〔追記〕参照。

裁判所法10条では、必ず大法廷で審理がなされるのは、はじめて法律の合憲性の判断を行うとき、違憲判決を下すとき、判例を変更するとき、と定められ、また、最高裁判所裁判事務処理規則9条2号では、小法廷の意見が2説に分かれ同数であるときや大法廷で判断することが相当と判断したときにも大法廷で判断されることと定められている。民法900条4号但書の合憲性については、すでに平成7年の合憲判決があるので、小法廷において、最高裁裁判官の半数以上が違憲に傾いていると推測できる。

一部報道によると今秋にも違憲判決が予想されるという。
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臓器の検体を写真投稿した学生を処分?

朝日新聞によると、看護学校の学生が、本年5月21日に、講義で使用された臓器の検体をTwitterに写真投稿したことを理由として、看護学校は学生の処分を検討しているという。(朝日新聞2013年7月1日)

ITMediaによると、投稿の内容は、検体の胃と腸の写真で、「グロ注意」「○○病院の患者さんの大腸もあるよ」という書き込みを伴っていたという。6月末になり、ネットで話題となり、看護学校や学生のバイト先にまで抗議が寄せられたという。
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地震予知で科学者らに有罪判決(イタリア)

3年前にイタリア中部ラクイラ(L’Aquila)で起きた地震を巡って、地震の発生前に国の委員会(高リスク予知予防委員会)が安全宣言とも受け止められる情報を流し被害を拡大させたとして、専門家ら7人が過失致死などの罪に問われている裁判で、10月22日、イタリアのラクイラ地方裁判所は被告側の過失を認め、全員に禁錮6年(検察側の求刑は4年)及び公職からの永久追放が言い渡された。

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ビデオが引き起こした反米暴動

 イスラム教の預言者ムハンマドを揶揄する内容の映画(”Innocence of Muslims”)が引き金となって、反米暴動がイスラム教諸国で激化した。9月11日、リビア東部のベンガジで駐リビア米大使のクリストファー・スティーブンスと大使館職員3人が殺害された。エジプトの首都カイロでも同じ日、米大使館が襲撃され、国旗が焼かれる事件が起きた。大使殺害の数日前からイスラム圏の各地で映画に抗議するデモが勃発しており、怒りの炎は事件後もチュニジアやモロッコ、スーダンなどに次々に飛び火した。朝日新聞によれば、デモの暴徒化により9人の死者を出したパキスタンでは、21日、アシュラフ首相が「預言者への攻撃は、15億人の我々イスラム教徒への攻撃である」と政府主催の集会で演説し、冒涜映画を非難したという。 続きを読む