電子書籍と著作権 (4) — Amazon

 Kindle Store では、2011年12月段階で、電子書籍は100万冊超をかかえ、その8割が10ドルを下回る価格で販売している。これとは別に、Kindle では、200万冊の<著作権切れ>した書籍を利用することができる。本年4月、Amazon の電子書籍の販売は、紙の本の販売を5%以上も上回るに至っている。
 本を見つけて購入するまで60秒と謳っているが、実際、そんなところだ。

 Kindle Storeで本を購入して読む。— Isaacon Walterの “Steve Jobs” は、$11.99で発売前に予約購入し、発売後 Kindle アプリ(iPad)を立ち上げると自動的にダウンロードがはじまった。ちなみに Haruki Murakami の ”1Q84″ も$11.99である。日本語では上下巻に分かれているが、英語版は分冊されず1,000円前後ということになる。日本語の紙媒体だと”1Q84″は¥3,780、”スティーブ・ジョブズ”は¥3,990 —円高の影響も多少はあるかもしれないが、 4倍近い価格差は翻訳の手間だけではあるまい。

 iPad のアプリ Kindle は、元々、Amazonショップと一体化していたが、なぜかアプリからの直接購入ができなくなった。この間の経緯は知らないが、Apple が iBook のライバルとして、Apple Store 以外からの購入にクレームをつけたのであろう。ちょっと不便になった。

 iPad アプリの Kindle で本を読むといろいろショッキングなことが起こる。
 最初のショックは、ページ番号が紙媒体の本と全く対応していなかったことだ。実際、フォントサイズを調整すると、どんどんページがズレていた。本の様式性を壊す試みと評価したい。ただ、論文作成において、ページの引用には困った。電子書籍をどう引用するかは、アメリカでもいろいろな議論があり、パラグラフやロケーションで引用箇所を示す方法なども検討されている。

 断固として紙媒体の書籍からの引用しか認めない指導教官に対する、学生の対応策として、Google Books か Amazon で書籍の全文検索を行い、紙媒体の本の該当箇所を探してページを引用するという方法が紹介されている。手間がかかるが、Google Books 1500万冊の強みである。今時、紙媒体の本を探して、あちこちの図書館をかけずり回るということではあるまい。

 しかし、— 残念ながら — 今では Kindle は、ポピュラーな本1万冊については、紙媒体の本のページ番号に対応させてしまった。

 Popular Highlights の機能もちょっとおもしろい。他の読者が多く線を引いている箇所が示される。”Steve Jobs” や”The Adventures of Sherlock Holmes” などポピュラーな本を読んでいると、自分がハイライトさせたわけではない箇所に点線が引かれて、例えば、”844 Other People highlighted this part of the book”(844人の他の人がここをハイライトさせた) と表示される。”Steve Jobs”では、宗教に対する見方に関する箇所で最初に Popular Highlights が出てくる。”The Adventures of Sherlock Holmes”では、冒頭のシャーロックホームズがアイリーン・アドラーのことを” The Woman”と呼ぶ箇所に Poplar highlights がある。こんな本にまで線を引きながら読む人はシャーロキアンだろうか。— Popular Highlights の機能は、ソーシャル・ネットワークと結びつけて、もっと応用されるに違いない。Kindle は、今でもFacebook や Twitter との連携機能をもっているが、この機能は一層強化され、(貧弱な発想だが、例えば)同じ科目を履修している他の学生がどこに線を引っ張ったか、あるいは、先生がどこに注目してこの本を読んだか、など教科書類の利用を向上させるかもしれない。

 Amazon は、「われわれの目標は『一度購入したらどこでも読める』ことだ」と言っている。が、そんなところに止まっていはいない。読んでいる本に自分で入れたメモや下線まで、自動的にAmazon.com のサーバ上にバックアップされている(クラウド機能)。その結果、Mac、iPhone、Windows 、Andoroid、Web Browserなど、自分のもっているどの Kindleアプリからでも、本だけでなく、メモや下線、読んだ箇所までそのまま引き継がれる。本を持ち運ぶことも、本のデータやメモを持ち運ぶことも不要になった。

 Amazonは、出版社抜きの本の流通をすすめている。「自費出版」と呼ばれてきたが、出版費用はかからない。1冊99セント(80円)で販売され、作家の取り分は33セント(25円)だという。本を出版することを日本では「上梓」というが、版木に文字を刻み込むという意味から転じて、出版を何か仰々しい儀式に仕立てあげているこの言葉は死語になるに違いない。Amazon の巨大な市場は、Scribd などとともに、「英語で情報を発信する」必要性を一層高めることになろう。

 一度購入したAmazonの電子書籍は、14日間他の人に貸し出すことができる。貸した人は、貸している間その電子書籍を読むことはできない。クラウド管理しているからできることだ。しかし、貸し出し機能は、現在のところ、出版社や著作権者が承諾しているものに限られている。— なぜ承諾が必要なのかわからない。私には、著作権者らによる不当な利用制限のように思える。

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電子書籍と著作権 (4) — Amazon」への2件のフィードバック

  1. ピンバック: 電子書籍と著作権 (3) — Google Books の挑戦 « Nob's Blog

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